この映画は、ホ・ジノ監督という独身男性が作った映画である。なので、どちらかというと男性の視点から描かれている。と、最初観たとき思った。
実は私はこの映画を3回観ている。
1回観たとき、宿題を出されたような気になって、もう一度観ないと細かいところまでよくわからなかったからである。
私の年齢が、主人公の妻に一番近かったせいか、彼女の気持ちを考えてしまった。
しかし、自分が、ソン・イェジン演じるヒロインの立場になって、今一度この映画を見ると、まるでこの映画は私たちの年代の女性のために作られた映画のように感じた。
《あらすじ》
イェジン演じるソヨンは、大学を出てすぐ、父親に「女の道は結婚。」と、見合い結婚を勧められ、それに素直にしたがい、専業主婦の生活を送っていた。
ところが、仕事で出かけたはずの夫が事故にあい、自分の知らぬ女性との不倫旅行と分かる。その女性と主人はお互い、自分が結婚するずっと以前、学生時代からのつき合いだったことが分かる。
しかも、見知らぬ若い男性まで事故に巻き込み、死なせてしまった。
なくなった男性のお葬式に、不倫相手の亭主(ペ・ヨンジュン)と、共に、侘びに行くが、罵倒されて泣き崩れてしまうのだった。
彼女は、事故で意識不明になった主人の看病をするうちに、同じく意識不明の妻を看護する不倫相手の夫インス(ペ・ヨンジュン)と、同じく心の傷を負った者同士という事でだんだんと打ち解けていく。
きつい看護が続き、二人は食事を共にするうちに、ソヨン「もし、不貞を働いた二人の意識が戻ったら、どういってやりましょうか。」インス「仕返しをしてやるかな。」ソヨン「私たち不倫しちゃいましょうか。」と話は、エスカレートしていく。
程なく二人は、互いの伴侶と同じ過ちを犯すが、男と女は少し違うようである。
男は、妻もしたのだから仕返しだみたいな。
女は、関係を持った後、男に恋愛感情を抱くようになる。
女は、主人以外の男性とおそらく初めてこういうことをしたのだろう。
少なくとも相手に好意を抱いていないと、こういうことはできない。
それから二人は、辛い看護の合間にデートするようになる。
しかし皮肉にも、インスの妻は意識が戻り、ソヨンの夫は死んでしまう。
回復に向かうインスの妻に、「どうして何も私に聞かないの?」と聞かれ、「あの人は死んだ。」と答えるインス。泣き崩れる妻。それから二人は別れたようだ。
インスは野外コンサートの照明技師の仕事に打ち込むが、コンサートが終わったとたん、雪が空から舞い降りてきた(もう四月だというのに)。
インスは季節では冬が好きだった。もう春なのに雪がまだふってくるとは・・。彼の心に希望の光が差し込んでくる。
仕事をしているときは夢中になってやりがいを感じるが、終わると何も残らない。
それが彼の毎日だった。
ソヨンは、夫に死なれてから、実家に身を寄せているようである。
春が好きなソヨンは、窓の外に咲く花に雪が舞うのを観て、仕事が終わったであろうインスを自分から電話で誘うのである。
季節では春がすきだが、雪も好きな彼女だった。
ラスト、二人は、四月にふる大雪のなかを、インス「どこに行きましょう。」ソヨン「どこに行くんですか。」と鸚鵡返しのようなやり取りをしながら、まっすぐに車を走らせるのだった。
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ソヨンは、生前、夫にどこまで恋愛感情を抱いていたのか定かでないが、インスにたいしては、自分から誘うところからも、又、彼女の輝くように美しい表情からも、恋に落ちた女性そのものであった。